科学する農家になる

科学する農家になる

2020年10月22日

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僕が、2年前から計3反強の畑で実践しているのが、いわゆる「無肥料・無投薬」栽培です。対外的には直感的にイメージしやすい「自然栽培」と謳っています(狭義の意味のアレではない)。

自然〇〇というふうに「自然」と付くと、一般的にはあまり科学的な根拠でどうこうメカニズムを説明するというより、なぜそうなるのかはわからないが、自然の摂理でこうなるのですというイメージ・・・。

もちろん、自然には人智を超えたものが存在すると考えているので、ある意味「結果オーライ」で、メカニズムはわからないけどやってみればできる、ということはあって当然のものだと思う。そういう意味で論より証拠」な栽培のあり方の側面は否定できないかもしれないです。

たとえば大昔に人類は火を使って暖をとったり食料を焼いたり、あるいは襲いくる野獣から身を守る手段として使って暮らしてきたが、「どうして火を使うと温かいのか、メカニズムが分からないものなんて危険だ」などと考えて火を使うのを自粛していたら、いま人類はどうなっていたかも分かりません。

そのうえで、僕にはこうなりたいと考える農家像みたいなものがあります。そのひとつは、「科学する農家」になるということ。

なぜかというと、本当の意味で「持続可能性」があり、規模の小さな小農にとっても労働負担・経済負担ともに小さい農業のあり方を見つけて、いつか遍く世界に広めたいから。

そのためには、どうしても「再現性」がマストになってきます。例えとしては今更感がありますが、あの世界中を混乱させたSTAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)は「再現性」という科学の最低要件を満たさないことが一番の問題点だったと言われています。世界中のどの研究者でも同じ手法でSTAP細胞を再現できなければ、「STAP細胞はあります!」とは科学的には到底言えないですよね。


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話を畑に戻すと、なぜ「肥料や堆肥を補給せず、農薬や除草剤も一切使用せずして、慣行栽培並に(あるいはそれ以上に)高品質・食味良好な作物が収穫され続けるのか」、僕はこれが可能という仮説のもと畑で実証実験をしていますので、ある意味演繹法的な農業を行っていることになります。これ(結論)を実証するということは、論文が書ける水準で科学的な論拠を提示できなければいけないということになるかと思います。

なので僕は、数年前から高校の理系科目の勉強からスタートしました。農業を始める前は基本的に製造業で商品開発や設計などの仕事をしていたので、物理の力学(機械工学や材料力学など)を学んだりもしていました。基礎には数学があるので、独学で数学検定2級の計算技能検定も取りました。農業の世界に入ってからは、理論化学や生物の参考書にも目を通して、今では地学・気象にも興味が出てきたので、その手の本も読もうと思っているところです。

ちなみに僕は、コースとしては文系の道を歩んできました。大学と院で6年間専攻したのは社会科学系の法学。でも、本当に関心のある教養は「リベラルアーツ」。なんのための学問か、という点に立ち返りたいと考えてきました。

どんどん小難しい話になって恐縮ですが、かつて明治初期に福沢諭吉が言ったように、学問の要というのは、ただ物事と物事との間に存在している「縁」を識ることにこそにあるのではないかと思います。僕はもともとスペシャリスト志向が強かったものの、いまではむしろ幅広く物事を学んで、1本1本の樹木が単独で存在しているのでなく、見えない土の下で菌糸ネットワークによって複雑に繋がれている世界のように、すべての自然現象を貫く根本法則のようなものを追求していきたいと思っています。それがサイエンスの態度では、とも思います。

そういう意味では、「農家」ほど恵まれた職業はないのかもしれません。朝から晩まで好きなだけ自然のなかにどっぷり使って、好きなだけ観察ができる。観察あっての仮説、そこから検証を繰り返してようやく実証に至る。理論と実践の両輪が大事なので、将来的には農業と並行して大学院などでも研究活動がしたいなと夢想しています(笑)

これまでブログでも何度か触れてきたことですが、「百姓」とはよく言ったものだと改めて思います。まさしくゼネラリスト、全体人間の異名?でしょうか。


はじめてのサイエンス (NHK出版新書)

こちらの参考図書は、池上彰著の『はじめてのサイエンス』です。著者自身も生粋の文系の経歴ですが、物理、化学、生物、医学、地学、環境問題といった幅広い自然科学トピックについて一般にわかりやすく咀嚼して説明してくれています。

文系/理系と分けることには異論もあったりするものの、便宜上そういった言葉を使うとすれば、世の中に必要なのは文系人間と理系人間だけでなく、文系と理系をつなぐ伝達役が必要なのかもしれませんね。


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